龍登園のGardening Diary「四季折々のガーデニング 彼岸花」

龍登園のローズガーデンの約400株の薔薇たちや、敷地内の草花の管理に
アドバイザーとしてお手伝い頂いている吉田先生のガーデニング・コラムです。

四季折々のガーデニング 『ヒガンバナ』

リコリス ラジアータ

ヒガンバナ(彼岸花)

科名/ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)
属/ヒガンバナ属(Lycoris)
学名/Lycoris radiata
分類/一年草または多年草
原産地/中国
花期/夏の終わりから秋にかけて

(概要)

お彼岸の頃に咲く赤い花は「Lycoris radiata」で、最近はたくさんの園芸品種があり、リコリスと言う名前で流通している。
花弁は他の花に比べて独特。幅は5mm、長さは4㎝程の花びらを6,7枚放射状に付ける。
ヒガンバナは、花が咲く時期に葉っぱはなく、花が終わった後に葉が出て生長する。花と葉が同時 に付かないことから「葉見ず花見ず」と言われている。


(彼岸花には別名が沢山。)

お盆を過ぎた9月辺りの「彼岸」に咲くから、彼岸花と名付けられたとされている。悲しイメージの付く花だが、別名が沢山ある。一番知られているのが「曼珠沙華」。梵語(サンスクリット語)で「赤い花」「葉に先立って赤花を咲かせる」と言う意味から名付けられたともいわれる。
熊本国府高等学校PC同好会の「彼岸花の別名」によると、中国、韓国、英米、学名を入れて1054もの名前があるという。

リコリス インカルナータ

リコリス オーレア(ショウキズイセン)

リコリス スクワミゲラ(ナツズイセン)

(役割)

彼岸花は墓地や畦に植えられていることが多い植物で、これには理由がある。彼岸花の球根にはアルカロイド系(リコリン)の毒が含まれて、誤って摂取すると中毒症状を引き起こすことがある。先人はこのことを知っていて、モグラやネズミなどから作物を守り、墓地に植えられたのは、埋葬された遺体を守るためだった。


(薬効・毒性)

薬用には鱗茎をを使い、生薬名を「石蒜(せきさん)という。鱗茎にはリコリン、ガランタミンなどのアルカロイドを含み、鎮咳去痰や鎮痛、降圧、催吐などの薬理作用が知られている。この石蒜から得たエキスは、別名を白色濃厚セキサノールといい、市販の鎮咳薬に配合されている。ただしヒガンバナのアルカロイドは作用が激しく、一般的には毒草として取り扱われるので安易に用いない。
含有成分のガランタミンは、アルツハイマー型認知症治療薬「レミニール」(一般名:ガランタミン 臭化水素酸塩)として2011年に発売された。しかし、レミニールの有効成分であるガランタミンは、同じ科のマツユキソウの鱗茎から見出され、開発された。ヒガンバナは墓地に植えられることが 多く、別名も死人花(しびとばな)など暗いイメージがある。新薬の開発はそのイメージを払拭する チャンスだったが、残念ながらマツユキソウに先を越されてしまった。

リコリス  スプレンゲリー

リコリス サンギネア(キツネノカミソリ)

マツユキソウ(スノードロップ)

参考資料 園芸情報誌 LOVEGREEN 、フリー百科事典「ウィキペディア」、公益財団法人「日本薬学会」生薬の花

花と緑の仕事人 「吉田和三」

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動物と植物の関りは、地球誕生から今日まで、生命を維持するための酸素の提供、体を作る食料として切っても切れない関係にある。 また人類との関係は有史以来、冠婚葬祭などのお供え物に利用してきた。
この冠婚葬祭に植物を利用することがガーデニング (園芸作業)の始まりである。 初めは、野山にある植物の葉や花を摘んで飾ったであろう。

しかし、野生の物を取りに行くより、家の近くに植えた方が効率が良いことに気づいたのである。その為には「いつ頃移植をしたが良いか」「いつ花を切ったが長持てするか」など試行錯誤したであろう。

私達は先人からの教えでより良いガーデニングを行うことができる。


このコーナーでは、植物に関わる事を紹介しようと思う。